第二章 優しい夜

9/22

365人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
「あの時の泣きわめき女!」 「え」  今度は私が目を丸くする番だった。  泣きわめき女だなんてひどい認識に、全身がかぁっと熱くなる。 「え、なに? なんでまた? あれ、もしかして俺のファン? ストーカー?」  ――ス、ストーカー?! 「そ、そんなんじゃありませんっ! ストーカーなんかじゃ」 「じゃあ、なんなんだよ。 やっぱりファン?」 「ファンでもストーカーでもないです! なんなんですか、ファンって……」  とはいえ、確かに何日もここで彼を待っていただなんて、客観的に見たらちょっとストーカーっぽい……?  いくらスニーカーを返すためだったとはいえ……。  がっくり肩を落としていると彼が一歩近づいてきて、何か珍しいものを見るような目で顔を覗き込んできた。 「もしかして、あんた」 「な、なんですか」  無遠慮な視線が私の顔の上を何往復も滑る。   ――ストーカー呼ばわりしてきたと思ったら、今度は人の顔をジロジロと……。 「あんた、俺のこと、知らないの?」 「へ?」  知らないもなにも、この前、ぶつかった時に初めて会ったばかりなのに、何言ってるんだろう。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

365人が本棚に入れています
本棚に追加