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私を見つめる佐々岡さんの瞳が揺れる。
彼女が私を羨んでいたことなんておくびにも出さなかったように、私も毎日一緒にいたのに本心を見せていなかった。
話しながら、もしもっと早くちゃんと気持ちを共有することができていたとしたら、私たちの関係は今より何倍も良好なものになっていたかもしれないと思う。
「だけど私はいつもそれ以上に佐々岡さんに元気をもらってたの。いつも明るくてニコニコしてる佐々岡さんと話すのは本当に楽しかったし、仕事で嫌なことがあった時も休憩室でランチしながら愚痴を言い合えば前向きになれた。佐々岡さんが同じ部署で、隣にいてくれてすごく心強かったよ」
「灰田さん……」
「今回のことは悲しいけど、でもね、佐々岡さんには感謝してる。これまでありがとう。辛い思いをしてたのに、気付いてあげられなくてごめんね」
きっと佐々岡さんも暴走する自分に引っ込みがつかなくなって、止まることができなかったんだろう。
そう言った瞬間、佐々岡さんが声をあげて大粒の涙をぼろぼろとこぼした。
「わーん! 本当にずるいですよー! そんなこと言われたら、言われたら……ッ」
子供のように泣きじゃくりながらグスングスンと鼻をすする。
「私、会社辞めます……。本当にごめんなさい」
「辞めないで。もうこういうことはしないって約束してくれるなら、私の前からいなくなることなんてないからね」
「わぁぁぁぁぁん。ごめんなさいぃぃぃ」
やっぱり根は悪い子なんかじゃない。ちゃんと私の知っている、今まで隣で笑っていてくれた佐々岡さんだ。
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