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ぼんやりとティファニー前の歩道を眺める私を、寺西さんが「大丈夫?」と覗き込んでくるけれど、しばらく言葉を返すことができなかった。
目の前にあの日の光景が浮かぶ。
高級ブランドの紙袋をたくさん持った背の高い爽の姿。
壊れたパンプスが二千円だと聞いて、なんでそれくらいで? とあっけらかんと言う爽。
ひざまずいて強引に自分のスニーカーを履かせる爽。
あの時、胸が高鳴ってしまったこと。
――駄目だ。こんなの。
忘れられるわけがない。
出会った時には1%だって好きになるとは思ってもみなかった人を、今は思い出だけでも愛しいほどに、こんなにも恋しくて。
胸の奥がぎゅぅっと苦しくなる。
すっかり思い出に気を取られていたけれど、バッグの中のスマホが震えてハッとする。
スマホを取り出すとニュースアプリの速報通知が表示されていた。
『カラフルストリームの都築爽が十五時より緊急記者会見』
――爽が緊急記者会見? 何かあったのかな……。
今、十三時半だから、会見まであと一時間半。
そんなに突然、何か発表しないといけないようなことがあったんだろうか。
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