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「……まったく、都築くんにはかなわないな」
寺西さんが呆れたように苦笑して首をもんだ。
「実はさっきテレビ局の知り合いに問い合わせたんだ。都築くんは事務所を通さずに記者会見を強行するらしい。例の熱愛について説明すると言っていたそうだよ」
「それって……」
「場所は赤坂Gホール。もうすぐ会見が始まる時間だ。美羽ちゃん。彼の口から、ちゃんとその靴の意味を聞いてくるといい」
「でも」
今、ここで爽のところに行くということは、きっと寺西さんを深く傷つけることになる。
これまでたくさん支えてもらった。
こんな私にずっと優しくしてくれて、好きだと言ってくれた。そばにいてくれた。
それなのに、こんなことが許されるんだろうか。
だけど、だけど私は……。
爽に会いたい。
会って、聞きたいことが、伝えたいことがたくさんある。
「寺西さん、ごめんなさい」
「謝らないで」
そう言って寺西さんはデニムのポケットから車のキーを取り出して、何か言いかけた後、もう一度それをぎゅっと握りしめた。
一瞬、切なそうに目を細める。
それから決意のともった眼差しで私をまっすぐに見つめた。
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