第十三章 トゥージュール

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「……まったく、都築くんにはかなわないな」  寺西さんが呆れたように苦笑して首をもんだ。 「実はさっきテレビ局の知り合いに問い合わせたんだ。都築くんは事務所を通さずに記者会見を強行するらしい。例の熱愛について説明すると言っていたそうだよ」 「それって……」 「場所は赤坂Gホール。もうすぐ会見が始まる時間だ。美羽ちゃん。彼の口から、ちゃんとその靴の意味を聞いてくるといい」 「でも」  今、ここで爽のところに行くということは、きっと寺西さんを深く傷つけることになる。  これまでたくさん支えてもらった。  こんな私にずっと優しくしてくれて、好きだと言ってくれた。そばにいてくれた。  それなのに、こんなことが許されるんだろうか。  だけど、だけど私は……。  爽に会いたい。  会って、聞きたいことが、伝えたいことがたくさんある。 「寺西さん、ごめんなさい」 「謝らないで」  そう言って寺西さんはデニムのポケットから車のキーを取り出して、何か言いかけた後、もう一度それをぎゅっと握りしめた。  一瞬、切なそうに目を細める。  それから決意のともった眼差しで私をまっすぐに見つめた。
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