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「都築くんのところまで送ってあげることは簡単だけど、送らないよ。美羽ちゃん、君はその靴で、ちゃんと自分で立って歩くんだ。これからは彼の隣で。今日のこの日がその第一歩。俺も……もう、ちゃんと君から手を放すから」
いつも私に寄り添ってくれた、春の陽だまりのような穏やかな微笑み。
どんなに感謝しても足りない。
私はこの人の存在にどれだけ救われてきただろう。
目の前の寺西さんが、こみあげてきた涙でゆがむ。
私はその涙がこぼれないように「いってきます」と精一杯、笑って見せた。
ちゃんと自分の足で、爽の隣に立てるように。
爽と肩を並べて、ともに歩いていくために。
爽に会いにいく。
私はブランドショップを飛び出すと、トゥージュールで地面を蹴って、全速力で駆けだした。
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