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開いたドアに身を隠しながらそっと室内を覗き込むと、ずらりと大勢の記者やレポーターが並んでいた。
激しくたかれるカメラのフラッシュが、彼らの頭のむこう、前方のステージ上に立つ爽を照らしている。
久しぶりに爽の顔を見ただけで胸がぎゅっと締め付けられた。
鼓動が忙しないのはきっと、走ってきたせいじゃない。
爽の声がスピーカーから大きく響く。
「週刊誌に掲載された田無さんと僕の熱愛に関しての記事は、まったくの事実無根です。関係者の方のコメントに関してはまったく身に覚えはありません。掲載された写真も映画のクランクアップ後の打ち上げで他のキャストやスタッフも一緒でした。田無さんのことは共演者として、女優さんとして尊敬していますが、映画の撮影や告知の他はプライベートで彼女とお会いしたことは一度もありません。この件に関しまして、ご迷惑、ご心配をおかけしたファンの方々、田無さん、関係者の皆様に深くお詫びします。申し訳ありませんでした」
爽が深々と一礼して顔を上げる。
真剣な瞳で真っ直ぐに記者たちを見つめて、また言葉をつむいだ。
「そして改めて、いつも応援してくださっているファンの皆様、これまで僕に携わってくださった関係者の皆様にご報告したいことがあります」
記者たちのざわめきとシャッターが激しくたかれる音が会場いっぱいに満ちている。
トップアイドルの、異例の所属事務所を通さずの記者会見。
爽が何を語るのか、この場にいる全員が注目していた。
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