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「彼女については一般の方なので詳しくはお答えすることはできませんが、僕のことを芸能人としてではなく普通の人間として、一人の男として接してくれる女性です。突然のことでファンの皆様には本当に申し訳ない気持ちですが、皆様が僕を心から愛してくれたように僕もその女性を真剣に愛したい。引退に関してはスターズマネージメント以外の事務所に所属することは考えられないため、もしスターズマネージメントを退社することになれば事実上の芸能界引退となります」
芸能界からの引退をかけてでも……お母さんのことで恩のある、自分を育ててくれた事務所に許してもらえなかったとしても、爽は私を選んでくれようとしているんだ。
すべてを失ってでも私との未来を選んでくれたんだ。
爽の言葉が胸に響いて、私はぎゅっとブラウスの胸元を握った。
「ですが、たとえ芸能界から去ることになったとしても、事務所とファンの皆様、カラフルストリームのメンバー、これまで僕に関わってくださったすべての方々への感謝の気持ちはずっと変わることはありません。長い間、こんな僕にたくさんの愛情を注いでくださり、ありがとうございました」
先ほどよりも深く、長く頭を下げる爽にフラッシュの白っぽい閃光が幾重にも降り注ぐ。
胸が熱い。
爽の気持ちが、行動が、言葉が、覚悟が。
全部、嬉しくてたまらない。
――爽、ありがとう。
私ももうあなたから背をむけない。目を逸らさない。
ずっとあなたの隣で、本当のあなたを支えていく。
爽とともに生きていく。
私は爽への想いに胸を震わせながら、記者会見が終わるまでずっと爽を見つめ続けていた。
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