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目が覚めた時、しばらく自分がどこにいるのか、私の身に何が起きたのか、まったく理解できなかった。
徐々にはっきりと意識を取り戻し、ここが見慣れた自宅であることに気付く。
どうやら布団にあおむけに寝ているようだ。
――あれ、なんで、私……。どうやってここまで帰ってきたんだっけ。
「お。やっと起きたか」
ちょっと高めのよく通る声が間近で聞こえて、私は思わず飛び上がるようにして身体を起こした。
「え? え? え? え?」
敷布団の脇、枕元のクッションの上で、壁に寄りかかるようにして彼が座っていた。
キャップもサングラスもないけれど、間違いない、彼だ。
見慣れたいつもの私の部屋。
布団とローテーブルと衣装ケースと内職のトレーが何段にもつまれた床。
そこに、いるはずのない他人がいる。
――どうして彼が私の部屋にいるの? この状況は何? ティファニーの前で彼と会っていたんじゃなかったっけ?
頭が混乱して、間の抜けた声を出してしまう。
「な、なんで?」
「あんた、気を失ったんだよ、六本木で」
「え?!」
「それしか言えねぇの?」
彼が呆れたようにため息をついて苦笑する。
倒れたって……。
「なんかの病気かと思って救急車呼ぼうとしたんだけどさ。あんた、むにゃむにゃ寝言いって、意識不明ってよりは寝落ちしましたってかんじで」
ね、寝落ち?
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