第二章 優しい夜

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 目が覚めた時、しばらく自分がどこにいるのか、私の身に何が起きたのか、まったく理解できなかった。  徐々にはっきりと意識を取り戻し、ここが見慣れた自宅であることに気付く。  どうやら布団にあおむけに寝ているようだ。  ――あれ、なんで、私……。どうやってここまで帰ってきたんだっけ。   「お。やっと起きたか」  ちょっと高めのよく通る声が間近で聞こえて、私は思わず飛び上がるようにして身体を起こした。 「え? え? え? え?」  敷布団の脇、枕元のクッションの上で、壁に寄りかかるようにして彼が座っていた。  キャップもサングラスもないけれど、間違いない、彼だ。  見慣れたいつもの私の部屋。  布団とローテーブルと衣装ケースと内職のトレーが何段にもつまれた床。  そこに、いるはずのない他人がいる。  ――どうして彼が私の部屋にいるの? この状況は何? ティファニーの前で彼と会っていたんじゃなかったっけ?  頭が混乱して、間の抜けた声を出してしまう。 「な、なんで?」 「あんた、気を失ったんだよ、六本木で」 「え?!」 「それしか言えねぇの?」  彼が呆れたようにため息をついて苦笑する。  倒れたって……。 「なんかの病気かと思って救急車呼ぼうとしたんだけどさ。あんた、むにゃむにゃ寝言いって、意識不明ってよりは寝落ちしましたってかんじで」  ね、寝落ち?
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