第二章 優しい夜

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 絶対、今、私、顔真っ赤だ……。  あまりの恥ずかしさに耳まで熱い。 「で、どうにもならないからタクシーでここまで運んだ」 「どうやってうちが分かったの?」 「あー。免許証、借りた。財布から。あと、鍵も」 「う、うそ……」  気が抜けて、また布団に倒れてしまいそうになった。  なんで勝手に……と思いかけて、ここまで運んでもらったのだから文句は言えないと思いとどまる。 「まぁ、もしなんか体調悪かったりしたら、一応病院で診てもらえよ」 「あ、は、はい……」  靴を返しにいったはずが、まさか寝落ちでこんな迷惑をかけるなんて。  申し訳ないやら情けないやらで、穴があったら入りたいくらいだ。 「普通、道端でいきなり寝るか? マジでビックリした」 「ご、ごめんなさい……、しばらく、まともに寝てなくて」  そう言いながら、ちらりと部屋の片隅にある作りかけの封筒が山積みになったケースに目をやる。  そうだ、今日だって本当は続きをやらなければいけなかったんだ。  そう思い、慌ててローテーブルの上の時計を見ると、時刻はもう深夜二時を過ぎていた。 「えっ、二時?! こんな時間まで、どうして」
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