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「あの!」
「ん?」
「あの……」
咄嗟に呼びかけてみてからも、突然こんなこと言われて引かれないかな、と不安になって口ごもってしまう。
心拍数が一気にあがって、私はぎゅっと拳を握りしめた。
「なんだよ」
彼の怪訝そうな声。
ずっとこうしているわけにもいかない。
言おう。言わなきゃ。
「ご飯、作るから、よかったら食べていってください」
「え、マジ?」
「あ、あの……味は保証できないし、たいしたものは出せないけど。ここまで運んでもらったお礼、というか、お詫びというか……」
やっぱり迷惑だったかな……。
気まずくてフローリングの上をさまよわせていた視線を、ゆっくりとあげる。
何かを考えているような彼の顔。
しばらく続く沈黙に耐え切れず、私から「急にそんなこと言われても困るよね。ごめんなさい」と口火を切った。
「いや、そういうわけじゃなくて。身体、大丈夫なのか?」
「え?」
「寝てただけとはいえ、体調悪いとか、疲れてるとか」
「えっと」
「……腹は、めちゃくちゃ空いてる」
私のこと、心配してくれてるんだ……。
ぶっきらぼうだけど、優しい人。
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