第二章 優しい夜

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「あの!」 「ん?」 「あの……」  咄嗟に呼びかけてみてからも、突然こんなこと言われて引かれないかな、と不安になって口ごもってしまう。  心拍数が一気にあがって、私はぎゅっと拳を握りしめた。 「なんだよ」  彼の怪訝そうな声。  ずっとこうしているわけにもいかない。  言おう。言わなきゃ。 「ご飯、作るから、よかったら食べていってください」 「え、マジ?」 「あ、あの……味は保証できないし、たいしたものは出せないけど。ここまで運んでもらったお礼、というか、お詫びというか……」  やっぱり迷惑だったかな……。  気まずくてフローリングの上をさまよわせていた視線を、ゆっくりとあげる。  何かを考えているような彼の顔。  しばらく続く沈黙に耐え切れず、私から「急にそんなこと言われても困るよね。ごめんなさい」と口火を切った。 「いや、そういうわけじゃなくて。身体、大丈夫なのか?」 「え?」 「寝てただけとはいえ、体調悪いとか、疲れてるとか」 「えっと」 「……腹は、めちゃくちゃ空いてる」  私のこと、心配してくれてるんだ……。  ぶっきらぼうだけど、優しい人。
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