第二章 優しい夜

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 二十分後にはローテーブルの上にすべての料理が並べられた。  ご飯はちょうど今朝炊いたものが炊飯器に保温されていたので、いつも私が使っている小さめのお茶碗で爽に手渡す。  湯気のたつ味噌汁のおわん。  部屋中に照り焼きの甘く、魚の焼けるにおいが漂っている。 「すげぇー! めっちゃうまそう! 食っていい?」 「う、うん。どうぞ」 「いただきます!」  目を輝かせた爽の声が、さっきよりワントーンほど上がっているような気がする。  最初にティファニーの前でぶつかったり、さっき再会した時のぶっきらぼうなイメージと全然違う。  ご飯でテンション上がっちゃうなんて、なんだかちょっと可愛らしいような。  料理を一口食べるたびに白米で口いっぱいにして、もりもり食べている。 「うんうん。うめぇー! どれも美味いけど、玉子焼き良いな」 「よかった」  家によって玉子焼きの味付けがしょっぱかったり、甘かったりするらしいと知ったのは中学のお弁当の時間だったか。  うちはずっとお母さんが甘い玉子焼きを作ってくれていたから、私も今でも砂糖を入れた玉子焼きを作る。  爽に出す手前、味付けに迷ったのだけれど、慣れた味付けの方が失敗しないかなと甘い玉子焼きにしたのだ。  美味しいと言ってもらえたことに安堵して、育ち盛りの男子中学生のように勢いよく食べ続ける爽を眺めながら、私も少しずつ料理に箸をつけた。  けっこう多めに作ったつもりだったのに、あっという間に料理のほとんどが爽の胃の中に消えた。  爽は食べている間、とにかくすべての料理を逐一褒めてくれるから嬉しいような気恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちだ。
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