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「じゃあ、バイト頼んでいいか?」
「へ?!」
思ってもいなかった爽の言葉に、勢いよく顔をあげる。
爽はまっすぐ私を見ていて、彼の大きな瞳に私が写っているのが見えた。
「弁当。食べたい時に連絡するから、うちに届けろよ」
「べ、弁当?」
「ああ。俺、ぜんっぜん料理できねぇんだよなぁ。美羽のメシ、母ちゃんの味に似てたし、めちゃくちゃうまかった」
みはね。
呼び捨てにされたことも気にかかるし、突然なんでそんなこと、と驚きを隠せない。
「呼び捨て」
「俺も爽でいい。呼び捨てでいいだろ? タメなんだし」
「腑に落ちない……」
「まぁ、いいじゃん。で、やんの? やんねぇの?」
「そっ、そんな急に言われても」
「金、必要なんだろ?」
「うっ」
痛いところを突かれて思わず口ごもってしまう。
すると爽があぐらをかいて座りなおして呆れたような声で言った。
「どうせ仕事のあとに内職やってるから寝不足だったんだろ? そのうち身体壊すぞ」
「それは……」
「弁当一回につき、材料費とは別で調理代と配達料で……そうだな。五千円出す」
「ご、五千円?!」
「なんだ? 足りないか?」
「足りないわけないじゃない……むしろ、どこの世界にそんな、素人の手作り弁当にお金だす人がいるのよ」
「そうでもしないと、ずっと今の生活を続けるだろ? 病気になる前に睡眠時間を削ってまで働くのはやめろ」
どうして。
私、まだ爽と二回しか会ったことないのに。
ただ道でぶつかって、それで……。
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