第一章 ティファニーの魔法

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 大のお人よしのお父さんは古い友人の借金の保証人になっていたそうだ。  借金をした男性は事業に失敗して夜逃げし、すべての負債が我が家に降りかかることとなった。  莫大な借金の返済には私や弟の生まれ育った家を売っても足りず、私は大学を中退。  内定が決まっていた今の会社の人事部長の恩情により、正社員にはなれずとも契約社員で雇ってもらえることになり、私だけが東京に残った。  家族は親戚のいる長野で家を間借りさせてもらって暮らしている。  お父さんは親戚の伝手で紹介してもらった農業を手伝いながら、お給料のほとんどを借金の返済にあて、生活費は私の仕送りで工面していた。  友人の借金の保証人になるなんて、馬鹿だ。  そう吐き捨てることも簡単だけれど、お父さんは絵に描いたように善良な人で、その良心からくる行動を家族の誰も責めなかった。  だけど、ふと苦しくなる。  大学を普通に卒業した同級生や、同じ職場でも正社員との扱いの差、着飾って六本木を歩く女性たち。  そのすべてを羨んでしまう自分がいるのだ。  羨ましいと思いたくて思っているわけじゃない。  妬みたくなんてない。  だから、いつもできるだけ笑顔でいられるように頑張っているけれど。  でもこうして嫌なことが重なってしまった時は、どうしてもその気持ちを抑えられなくなる。
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