第三章 本当のあなた

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 チェックなんてするわけがない。  特に会社ではいつ契約を切られるかビクビクしながら必死に働いているんだから、それどころじゃないもの。 「寺西隆一、二十九歳、独身。社長の息子でありながら、副社長の座にはつかずに会社のために広報部に身を置く。その類まれなるルックスと溢れる知性でメディアに出ることも多く、何度も雑誌やテレビに取り上げられてるんです。御曹司でイケメンで仕事の才能もあって世間にも認められて、モデルとしてファッション誌に呼ばれたりもしてるんですよ? 間違いなく、この会社で一番のモテ男です」  早口で捲し立てるように寺西さんのプロフィールを披露してくれる佐々岡さんに圧倒されて、私は苦笑することしかできない。 「そうなんだ」 「まさかこの会社で寺西さんを知らない人がいたなんて! しかもこんなに近くに!」 「あはは、なんかごめんね」 「ま、いいですけど。ライバルは少ない方がいいんで」 「ライバル?」  脈略のない彼女の言葉にぽかんと口を開けてしまう。  そんな私を見て、佐々岡さんはふふんと鼻息荒く笑った。
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