第三章 本当のあなた

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「社内だけでも何人もの女性が寺西さんを狙ってるって噂です。でもその分、寺西さんってすっごい女性関係が派手というか、プレイボーイみたいで。そんな人のたった一人の運命の女になれたら最高じゃないですか?」 「……う、運命の、女」  佐々岡さんは満面の笑みで深く頷くと、実は彼の行きつけのバーで隣に座って連絡先を交換したのだと囁いた。  ーー恐るべき行動力!  ちょうどその時、目線を上げた寺西さんが私たちを視界にとらえたようで、こちらに向かって微笑みながら軽く手を振った。 「私、頑張りますっ!」  彼女の熱意が眩しい。  私は尊敬の念すら覚えながら興奮気味の佐々岡さんをなだめつつ、休憩スペースに移動していつもの窓際のテーブルでお弁当を広げた。  佐々岡さんはサラダを小さな口で咀嚼しながら、まだ寺西さんの噂なのか武勇伝なのか、いかにモテるか、ライバルが多いのかということを熱弁している。  それをなんとはなしに聞きながら、休憩スペースの壁に据え付けてあるテレビ画面に目を向けた。
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