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爽がTシャツとスウェットパンツ姿でナイキのラバーサンダルをつっかけ、上半身だけこちらに乗り出して片手でドアを押し開けている。
リラックスウェア風ではあるものの、Tシャツの胸にはばっちりハイブランドのロゴが踊る。
気安いかんじに笑いかけられて、昼間、テレビで見た歌い踊る爽を思い出してしまう。
名は体を表すと言うけれど、その名の通り爽やかな好青年風のカラストの都築 爽。
この片眉を上げる笑い方といい、ぶっきらぼうでいて年相応の親みやすさを醸す目の前の彼とは、まるで別人みたいだ。
それなのに明るい瞳の色はテレビで見たのと同じで、やっぱり彼はアイドルなのだと不思議な気持ちにさせられた。
「こんばんは」
「おう。入れよ」
挨拶をしながらお弁当の袋を差し出しかけて、爽の言葉と、更に大きく開かれたドアにぎょっとする。
「ここで大丈夫だよ? お弁当渡したら帰るつもりだったし」
「ん? なに、この後、なんか予定あんの?」
「ないけど……」
「そしたら食っちゃうからあがって待ってろよ。次のために弁当箱、持って帰った方がいいだろ?」
「そうだけど、でも」
「いいからいいから」
爽に手首を掴まれて引き寄せられたかと思うと、あっという間に私は玄関の中にいた。
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