第三章 本当のあなた

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 保冷バッグからお弁当箱とフルーツのケースを取り出しながら、一応メニューを説明する。 「今日は牛肉とたまねぎ、にんにくの芽の炒め物と、ミニトマト、ナスの煮浸しにきゅうりの浅漬け、玉子そぼろご飯にしてみました。デザートにぶどうも」  四角いお弁当箱の蓋を開ける。  よかった、まだちゃんと温かい。  ふわりとお肉の食欲をそそる匂いがたちのぼって、鼻孔をくすぐった。  爽がお弁当箱をニヤニヤ笑いながら興味深そうにのぞき込む。 「今日のもめちゃくちゃうまそうじゃん。食っていい?」 「うん。どうぞ」 「いただきます」  この前は美味しいって食べてくれたけど、口に合わなかったらどうしよう。  そんな不安がこみあげて、爽の長い指が箸で炒め物を口に運ぶのをじっと見守る。  肉が口内に消えた瞬間、爽が「すげぇうまい!」と短く叫んでご飯をかき込んだ。  私はその様子にホッとして思わず胸をなでおろす。  ――よかったぁ。気に入ってもらえたみたい。  それから爽の箸は止まることはなく、あっという間にお弁当箱を空っぽにした。  手を合わせて「ごちそうさん。献立も悪くねぇじゃん?」なんてちょっと偉そうな感想を述べつつも、その素振りやお弁当箱の上に揃えられた箸、米粒ひとつ残していないところに育ちの良さが垣間見える。 「なによ、その言い方」なんて返しながら、胸の内では爽が美味しいと言ってモリモリ食べてくれたことが嬉しかった。
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