第三章 本当のあなた

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 彼はソファーの背もたれにもたれかかって、満足そうに息をついている。  お弁当箱を保冷バッグに片付けながら、ふと視線を上げると壁沿いの棚に、CDのプラスチックケースがいくつも並んでいるのが見えた。  もしかして、あれ、爽のグループ……えっと、カラフルストリーム、だったっけ? そのCDなのかな。   「ねぇ、あれって」 「ん?」  CDを指す私の人差し指の先を、爽の視線がついてくる。 「あれ、爽の、カラストのCDなの?」 「……は?」  その時、私は一瞬でそう問いかけてしまったことを後悔した。  爽の瞳は満腹感に満たされた穏やかな色を急速に失って、冷たく暗い。  初めて会った時のふてぶてしさも、テレビのなかの爽やかさも、今の爽にはどこにもなくて。  無表情で、じっと私を見つめている。  凍りついたような空気。
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