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急にどうしたんだろう。
聞いたらいけなかったのかな。
でも、なんで……。
「あの、爽ってアイドル、なんだね?」
「……だからなに?」
「えっと……だからどうってわけじゃないんだけど」
「じゃあなに? 何がしたいわけ? サインでもしてほしいか? あ、それとも金がもっと欲しいとか? 五千円じゃ足りねぇってこと? なぁ、芸能人と知り合えて嬉しいか?」
「えっ、いきなりなに言って……」
吐き捨てるように言った彼の声にはたくさんの棘がある。
私があっけにとられている間にも、爽は無表情で責めたてるように言葉を連ねた。
「お前、最初から俺に近づくためにぶつかってきたんじゃねえの?」
「え?」
「俺のこと、さも何も知らなさそうな顔して、わざとぶつかってきたんだろ? ハニートラップってやつ? 俺に近づいてツーショット写真でも週刊誌に撮らせるつもりだったか?」
その言葉を聞いた瞬間、身体がかあっと熱くなって、頭の中で何かが切れる音がした。
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