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「今まで俺の職業とか金とか見た目とか……そういうの目当てで寄ってくる女がいっぱいいたんだよ。そいつらは俺自身のことなんて、これっぽっちも見ちゃいない。好きですって言ってきたと思ったらメンバーや事務所の他のアイドルを紹介してくれって言ってきたやつもいたし、高校の時に三ヶ月だけ付き合った女に当時の写真を週刊誌に売られたこともある」
「え、ほんと?」
「あぁ。その写真で、いくらもらえたんだろうな?」
驚いて訊いた私に、爽は眉を寄せて肩をすくめて見せた。
その表情はどこか悲しそうでもあって……芸能人である爽は、きっとこれまでうんざりするほど嫌な目にあってきたんだろうな。
「でも美羽は違ぇよな。確かに弁当を頼んだのは俺だ。連絡先を交換したのも、ここの住所を教えたのも……美羽と関わり続けようとしたのも、俺。言い訳がましいけど、軽く人間不信なんだよ……ホント悪かったな」
「ううん……」
爽が経験してきた裏切りを思うと、同情心がわきあがって怒りやショックはいつの間にかどこかに消えてしまった。
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