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第四章 もうひとつの出会い
どんよりと雨雲がたれこめた梅雨空に負けないほどの暗いため息を吐き出して、私は休憩室のベランダの柵に背をもたれた。
六月に入り、あれから週に二、三度、お弁当を爽に届ける日々を送っている。
彼のおかげで内職で寝不足になることはなくなり、身体的にはすこぶる調子が良いのだけれど。
相変わらず後輩の柚木さんはミスを連発。
先輩とはいえ、契約社員の私が言うのは揉め事のもとと、正社員の佐々岡さんから注意してもらっても気怠そうな勤務態度すら一切直らない。
メモもとらなければ、いわゆる報連相――報告、連絡、相談も守らない。
おかげで今度はタイの繊維工場への注文依頼をミスし、夏の新作商品の製造工程に大きなロスを生みかけた。
怒られてもケロっとしている彼女の神経の図太さを少し私に分けてもらいたい。
それと、正社員という地位も。
専務だか取引先だかのコネ入社だという噂もあるけれど、そういう彼女のすべてを私と交換できるものなら、してほしい。
彼女のミスの穴埋めに奔走して疲れ果てたところを部長に呼び止められ、ちょっと休憩してきなよと缶コーヒーをもらった。
それで休憩時間でもないのに、ひとり、ここで外の風にあたっている。
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