第四章 もうひとつの出会い

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 川のせせらぎのような、そこに落ちる陽だまりのような、胸にすとんと落ちてくる声が私を励ますように囁いた。 「君がしている努力は必ず、ちゃんと見てくれている人がいる。なんなら、これから近くで俺が見守ってあげるよ」  じんわりと心に温もりが灯る。  ――モテるはずだ。ただ、顔がかっこいいだけじゃないんだもん。   たった今、知り合ったばかりなのに、寺西さんのその声や微笑みみたいに、私を穏やかな気持ちにさせてくれる。  もしかしたら女たらしじゃなくて、人たらしなのかも。 「あ、ありがとうございます」 「ちょっと気晴らしして、また頑張ろう」 「はい」 「あ、じゃあさ、俺と遊んでみる?」 「え」  微笑みながら顔を覗きこまれて、ほだされて笑い返していた私は思わず目を見張った。  寺西さんの瞳はさっきまでとは打って変わって、好色そうな、妖しい色を宿している。
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