第四章 もうひとつの出会い

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 終業後、家に戻ってお弁当の準備を終えると爽の家に向かった。  初日はあんなに緊張したタワーマンションの駐車場もエントランスもエレベーターにも、もうすっかり慣れていつもの手順で爽の部屋に着く。  爽も私がお弁当を届けることに慣れた様子で、今日は『たぶんその時間帯は風呂入ってるから鍵開けとく。勝手に入って中で待ってて』とメッセージが送られてきた。  これまで毎回、爽は私を部屋にあげ、最初と変わらずに美味い美味いとお弁当を完食してくれたし、その間に交わす会話で少しずつ打ち解けることができた。  アイドルだって、本当に私と何ら変わらない、中身は同年代の普通の男の人。  爽と話すのは楽しくて、窓から見える夜景は綺麗で……いつもここにいる時はほんの少しだけ日常を忘れられた。  ドアに手をかけると本当に施錠されておらず、重たい手ごたえとともにこちら側に開いた。  いくら私が来るからって不用心では? と一瞬思ったけれど、きっとこれだけセキュリティーがしっかりしているマンションだからできることなのだろう。  返事がないのは分かっていつつも「おじゃまします」と呟いて中に入る。  いつものフレグランスの香りにまじった湿気と石鹸の甘い匂い。
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