第四章 もうひとつの出会い

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 もうかなり慣れたつもりでいるのに、唯一ここで慣れないのはリビングの大開口の窓から見える夜景だ。  今日もリビングに入った瞬間から、つい見惚れてしまう。  お弁当の入った保冷バッグをテーブルに置いて、私はそっと窓ガラスに歩み寄った。  橙色の暖かな火を灯したロウソクのように、今日も東京の夜に佇んでいる東京タワー。 「お、来てたのか」  背後から爽の声がして、我に返る。 「おじゃましてます」と言いながら振り向いた瞬間、目に入った爽の姿に私はフリーズしてしまった。  引き締まった色白でしどけない肢体。  いな、裸体。  細いなと思っていたのに、意外と筋肉質で……一応、下はスウェットを履いてはいるけれど……無理。  なによ、これ! 「ん? どうした?」  口をぱくぱくさせて何も答えられない私に、首にかけたタオルで濡れ髪をガシガシと拭きながら上半身裸の爽が近づいてくる。  ――目、目、目のやり場に困る! 「は、裸……」 「あ?」  顔が熱い。  男の人の裸なんて、お父さんと康太のくらいしかまともに見たことがない。
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