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他人の水着姿なら高校のプールの授業では見慣れた風景だったけれど、大人の男の人の身体となると見るのは初めてかもしれない。
不本意ながら動揺を隠せない私を、しばらく怪訝そうに見据えていた爽がニヤリと笑う。
それから急に真顔になって、ゆっくりと私に近づいてきた。
「あ、あの……」
一歩、一歩、少しずつ爽との距離が縮まる。
くっきりと浮いた鎖骨に、割れた腹筋。
――ダメだ、つい目がいっちゃう。見ないようにしないと。
そう思うのに、にじり寄ってくる爽から目が逸らせない。
「そ、爽?」
爽は何も答えない。
手を伸ばしたら、もう触れられそうなほど近くにある彼の茶色い瞳。
ボディーソープの香りなのか、甘いにおいが濃くなる。
――ち、近いっ!
思わず後ずさると、背中に窓ガラスの冷たさが伝わってきてもう逃げ場がないことが分かった。
爽はじっと私を見つめている。
とんっと、爽が私の背後にある窓ガラスに両手をつく。
――え、これって……壁ドン?!
こんなの少女漫画の世界でしか見たことがない。
爽の両腕に挟まれるようにして、逃げ場なんてどこにもなくて。
心臓の音がすごい。爽に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいの大音量で、息があがる。
私の鼻にぶつかってしまいそうな距離に迫る爽の鼻先。
鋭い視線から目を逸らしたくて、たまらず目をぎゅっとつぶった。
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