第四章 もうひとつの出会い

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 来月、爽が主演する恋愛映画の公開が控えているそうで、宣伝のために取材やテレビ出演で忙しくなると聞いていた。  だから今回もスタミナのつくような肉料理を中心に考えた献立だ。  私もつい先日、その少女漫画原作の映画が公開間近だとスマホのニュースで見た。  モデルだという手足の長い清楚そうな女の子が相手役で、胸キュン必至のラブストーリーらしい。  爽は口いっぱいに唐揚げを頬張りながら、机の上に出しっぱなしになっている映画原作のコミックに目をやった。  ――役作りのために読んだりしたのかな。  仕事にはけっこう真面目なタイプなのかも。 「恋愛禁止のアイドルが映画のなかで恋愛するって、なんかおかしな話だよな」  ちょっと笑って肩をすくめる爽の口元にお米の粒がついていて、思わず笑ってしまう。  ティッシュを手渡すと、笑われたことを不本意そうに口元を拭った。 「恋愛禁止なの?」 「禁止って事務所に言われるわけじゃねぇけど」 「?」  首を傾げた私に、爽はどこか居心地悪そうに頭を掻いた。
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