第四章 もうひとつの出会い

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「色んな気持ちで応援してくれてるファンがいるんだよ。アーティストとしてだったり、親心だったり、疑似恋愛したり」 「疑似恋愛?」 「あぁ。どんな気持ちでも応援してもらえたらありがてぇし、もちろんファンあっての仕事だと思ってる。でも俺らのことを男として好きだって言ってくれてるファンは、俺らが誰かと恋愛してると失望すんだよ」 「でも、爽も……アイドルも、普通の人間なのにね」 「普通の男だけど、その前にアイドルなんだよなぁ。……ま、特に俺の場合は学生時代の写真が売られたこともあったしな。次はねぇっていうか……これ以上、ファンの気持ちを裏切りたくねぇってのはある」  爽は苦笑して、お茶をぐいっとあおった。細い首のなかで喉仏が上下する。  最初にここに来た時、芸能人であるが故に色々と苦労をしてきた様子だったけれど、アイドルでいるということは私が思っている以上に大変なことなのかもしれない。  ーー普通の男である前にアイドル、かぁ。  私はその一言で、爽がアイドルという職業をするうえでの覚悟を感じたような気がした。
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