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じっと真面目な顔で聞いていた爽が「はぁ?!」と目を剥いて大きな声を出した。
ぼんやりと思考が過去に戻っていた私は、その声で現実に引き戻される。
「なんだよそれ。美羽、なんも悪くねぇじゃん。そいつがただ器がめちゃくちゃ小せぇやつだったってだけだろ」
「えっと……」
爽が呆れたように笑う。
「借金とか、家の事情とか、そんなの関係なくねぇ? 恋愛ってそんなもんですることかよ。相手を好きかどうか、大切に思うかどうか、それだけだろ。たまたま小さめ君にあたったくらいで恋愛禁止とか言ってんじゃねぇよ。今どき、恋愛禁止の女性アイドルだって裏で遊んでるってのに」
――小さめ君って。
こともなげにそんなことを言う爽に驚いて、私はまたテーブルの上の少女漫画に視線を落とした。
「できるかな。して、いいのかな」
借金がいつ終わるのかなんて分からないし、完済する頃には私もおばあちゃんに近い年齢になっているかもしれない。
でもそうしたら、完済したらいつか、いつかはまた誰かを愛したい。そう思ってきた。
だけど、爽の言うように借金があっても家族に仕送りしなくちゃいけなくても、貧乏で手に職がなくても……誰かを愛して、誰かに恋していいんだろうか。
「当たり前だろ。つーか、自信もてって。美羽、わりと可愛い顔してんだから……」
「え?!」
――え、今、可愛いって……。
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