第四章 もうひとつの出会い

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 胸の高鳴りも、頬の熱さも全然おさまってくれなくて、お互い無言になりかけることがすごく気まずいような気がする。  私は食べかけのままになっている爽のお弁当箱から、ひょいっと唐揚げをつまみあげて口に放り込んだ。  うん、美味しい。  ちゃんとしっかり味がついてるし、冷めてもサクサク。 「あーっ!! お前、それは俺が大事にとっておいた最後の一個!」  爽が目を丸くして前のめりになって叫んだ。 「い、いつまでも食べないからいらないのかなと思って」 「いらないわけねぇだろ!」 「じゃぁ最初に食べればいいじゃない!」 「それは俺の勝手だろうが!」  言い合いをしているうちに爽も私も顔の赤みや恥ずかしさも落ち着いてきて、言葉の応酬をちょっとだけ楽しく思い始めていた。  爽は「マジで覚えとけよ」なんてぶつぶつ言いながら残りの料理をたいらげる。  そんな彼の様子に、自然と口元が緩んでしまう。 「ふふ」 「何笑ってんだよ」 「別にー?」  また軽く言い合いをしながらお弁当箱を片付けていると、ふいに玄関のドアが開くガチャリという金属音が聞こえてきた。
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