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「え?」
「マジか」
そんな風に声をあげたのは爽と同時で。
「マネージャーだ。隠れろ」
「え、え、どこに?」
「どこにって、えーと、あー」
慌てふためいてきょろきょろ部屋中を見回してみても特に隠れられるような場所などなく、そんなことをしている内に無情にもリビングドアが開かれる。
四十代半ばくらいの大柄の男性がのしのしと部屋に入ってきて、驚いたように目を丸くすると私の頭から足先までサッと視線を滑らせた。
き、気まずい……。
爽がため息をついてソファーから立ち上がると、私と男性の間に割り込むようにして立った。
「設楽さん、チャイムくらい鳴らしてっていつも言ってるじゃないですか」
「あぁ、ついね……ごめん。明日のスケジュールの確認と、ちょっと聞いておきたいことがあったんだけど。えーと、彼女は? 爽が女の子を連れ込むなんて珍しいね」
「ば! そ、そんなんじゃねぇし」
「じゃあ、お友達?」
「いや、その……弁当を届けてもらってます」
「弁当? この女性に?」
爽の歯切れの悪い言葉にきょとんと不思議そうな顔をした設楽さんと呼ばれた男性が、爽の肩ごしに私を覗き込んでくる。
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