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スポーツマンみたいで爽やかな短髪、博識そうで思慮深い眼差し。
ここで変なことを言ったら、きっと爽に怒られる。
私はおっかなびっくり、ぺこりと頭を下げる。
「色々あって」
「色々?」
「ああ。設楽さんの心配するようなことはないから。ウーバーイーツとか宅配ピザと同じですよ」
爽のその言葉を聞いた瞬間。
チクリと、胸の奥に小さな痛みが走った。
――あれ、なに、これ……?
設楽さんが私と爽を交互に眺めながら、首を傾げる。
「その割には、随分親しそうな声がしてたけど?」
「別に……本当にご心配をおかけするようなことはないんで」
「ふぅん。まぁでも爽もこんなこと言わなくても分かってるだろうけどね。今、大事な時期なんだ。気をつけてくれよ」
「はい」
爽の後頭部が頷くのを、私はぼんやり見上げていた。
金髪に近い茶色くて細い頭髪がさらりと流れる。
ーーどうして、今、あの失恋のことを思い出した時みたいに胸が痛くなったのだろう。
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