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ワイドショーがエンタメニュースのコーナーに切り替わる。
「いよいよ放映まで一ヶ月をきったあの映画のお二人から録りたてほやほやのコメントが到着しました!」と明るく読み上げるいつもの女性ナレーター。
映像が切り替わった瞬間、画面には爽と、すらりとしたロングヘアの女の子が映し出された。
――爽。
件の恋愛映画の宣伝だ。
そういえば、番宣で忙くしているのか一週間ほど爽とは会っていない。
そっか、映画の公開前で一番忙しいとき、なんだよね。きっと。
画面のなかの爽は今日も私が知る彼とは別人みたいに、清々しさを絵に描いたような顔で笑っている。
ぶっきらぼうで優しくて照れ屋な彼とは別人の、アイドルとしての爽。
こうしてテレビに映っているのを見ると、やっぱりこっちが本物で、私の見ている爽は、私が会った爽は幻なんじゃないかとすら思えてくる。
嘘みたいに遠い人。
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