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隣で佐々岡さんは社割で夏物の服を買った話をしている。それに生返事をしながら、耳も目もテレビから離せずにいた。
インタビュワーが何か質問する度に、爽と女の子が仲睦まじそうに笑い合う。
質問に答える時、女の子に向ける視線。
肩が触れそうな距離で顔を見合わせる二人。
――まただ。
また、胸がぎゅっと痛くなる。
この痛みは、あの日、マンションで感じた痛みの比じゃない。
苦しささえ感じる、締め付けられるような強い胸の痛み。
もう爽の声も女の子の声もインタビュワーの声も、何も聞こえない。
ぼーっと爽の顔を見つめる内に、画面は別の映画の宣伝に切り替わった。
「もう灰田さん、聞いてます?」
「あ、う、うん。ごめん」
「それで、寺西さんの好きな女性のタイプとかあるのかなって思って聞いてみたんですけどぉ」
佐々岡さんに名前を呼ばれて、急速に意識が引き戻された。
彼女の話は寺西さんをどう攻略するかという話題に変わったようだ。
なんとか会話に集中しようと試みても、脳裏を先ほど見た爽と女の子の姿がよぎる。
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