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なんなの、この胸の痛み。こんなのって、こんなのって……。
まるで、私が爽を意識して、嫉妬してるみたいじゃない。
まさか、そんな。なんで。どうして。
だって、あんなに住む世界が違うって思ったのに。
もしも、万が一にも恋をしても、絶対に手の届かない相手なのに。
報われるわけがないのに。
だからやっぱり、そんなはずない。
私が爽を好きになるわけがない。
なっちゃいけない。
昼休みが残り十五分になって佐々岡さんがコーヒーを買ってくると言うので、私は一人、休憩室のベランダに出た。
風にあたって熱にうかされたようなこの頭を冷やしたい。
朝から降り続いていた雨はあがったようで、柵やベンチも半分乾いていた。
それにしても私ってば、なんてことを考えていたんだろう。
爽のことを意識してるみたいに……。
「お、苦労人の美羽ちゃん、発見」
休憩室に面したガラス戸が開く音と同時にそんな朗らかな声が聞こえて振り返ると、寺西さんがこれまた朗らかに微笑みながらベランダに出てくるところだった。
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