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第六章 ステージの上の王子様
七月に入っても相変わらず雨の日が続き、徐々に蒸し暑い日が増えてきた。
梅雨明けはまだしばらく先のようだけれど、もう夏の訪れを感じる。
あれから爽は時間のある時は私にお弁当を届けるように連絡をくれるし、マネージャーの設楽さんに言ったことも言われたこともまったく気にしていないようだ。
普通にしていてくれた方がありがたいけど……。
私はというと平静を装ってはいるものの、爽が料理を子供のように無邪気に美味いと言ってくれたり、ぶっきらぼうに「最近はちゃんと寝られてんのかよ?」なんて聞いてくるから、度々ときめいてしまっていた。
気が付けばお弁当がなくても爽からメッセージが入るようになり、なんとなくお互いに今何してるとか、今日はこんなことがあったなんてことを話すようになった。
これまで家族や仕事以外では連絡を取り合うようなこともなかったので、爽とのトーク画面を見るだけでなんとなくくすぐったい。
だけど仕事で疲れたときや、部屋でひとり節約のことを考えているときに入る彼からのメッセージは、私をホッとさせてくれた。
先週は話の流れでお弁当を届けるために買い出しをしているとメッセージを送ったら、帽子とサングラスとマスクという重装備で私のマンション近くのスーパーに現れたので卒倒しそうになった。
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