第六章 ステージの上の王子様

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「ちょっと! 誰かにこんなところ見られたらどうするの?」 「こんだけ変装してれば分かんねぇって」 「うーん、そうかなぁ。でもちょっと不審者っぽい」 「確かにな」  そんなことを言って笑い合いながら買い物をするのは、いつも一人でする買い物とは全然違う。  心から爽といる時間を楽しんでいる自分がいる。  買い物を終えると荷物を持とうとする私から荷物を奪い取って、うちまで運んでくれる。  たった五分の道のりでも誰かに見られやしないかとドキドキしながら、爽に言われたわけでもないのに二メートルくらい後ろを歩く。  一度、私を送ってくれた時に覚えたのか、爽は迷わずうちのマンションまでたどりついた。  しばらく時間を置いてからマンションに入って部屋のドアを開けると、荷物をキッチンまで運んでくれていた。 「これくらい持てるのに」 「こんなの男に持たせればいいんだよ」 「でも」 「うちは母ちゃんが女の子には重いもの持たせるんじゃないよ! とか言う家だったからな」  照れくさいのか頭を掻く爽。
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