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「あ、美羽ちゃん、いたいた。ちょっと一緒に来て」
「お疲れ様です。えっと、どういうことですか?」
「もう部長には話したんだけど、うちの方の人手が足りなくなってね。広報部の仕事を手伝ってほしいんだ」
「あ! それなら私が!」
突然のことに戸惑っていると佐々岡さんが笑顔で手を挙げた。
寺西さんが苦笑して、周りに聞こえないように囁く。
「ごめんね、もう話通っちゃってるから。またバーで会おう」
「……そうですかぁ」
心底残念そうな彼女に、私もできれば佐々岡さんに行ってほしいと内心で思う。
オフィスの上手のデスクにいる部長に視線を向けると、目だけで頷かれた。
本当にもう部長も了承してるんだ……。
腑に落ちないけれど、仕方なく寺西さんについてオフィスを出た。
「急にごめんね。実はアシスタントに入ってもらってた子が突然、会社に来なくなっちゃって」
「そんなことがあったんですか」
「うん。ずっと俺に好意を寄せてくれてたみたいでね。昨日、告白を断ったら辞表を出してそのまま」
「えー……」
――さ、さすが寺西さん。やっぱりモテるんだなぁ。
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