第六章 ステージの上の王子様

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「あ、美羽ちゃん、いたいた。ちょっと一緒に来て」 「お疲れ様です。えっと、どういうことですか?」 「もう部長には話したんだけど、うちの方の人手が足りなくなってね。広報部の仕事を手伝ってほしいんだ」 「あ! それなら私が!」  突然のことに戸惑っていると佐々岡さんが笑顔で手を挙げた。  寺西さんが苦笑して、周りに聞こえないように囁く。 「ごめんね、もう話通っちゃってるから。またバーで会おう」 「……そうですかぁ」  心底残念そうな彼女に、私もできれば佐々岡さんに行ってほしいと内心で思う。  オフィスの上手のデスクにいる部長に視線を向けると、目だけで頷かれた。  本当にもう部長も了承してるんだ……。  腑に落ちないけれど、仕方なく寺西さんについてオフィスを出た。 「急にごめんね。実はアシスタントに入ってもらってた子が突然、会社に来なくなっちゃって」 「そんなことがあったんですか」 「うん。ずっと俺に好意を寄せてくれてたみたいでね。昨日、告白を断ったら辞表を出してそのまま」 「えー……」  ――さ、さすが寺西さん。やっぱりモテるんだなぁ。
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