第六章 ステージの上の王子様

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 白く横に長い大きな建物。  広い開口部に青く光る硝子がはめ込まれ、その上の巨大なモニターでは映像が映し出されている。  入り口にできる入場待ちの列にはたくさんの女性たち。ちらほら男性や家族連れの姿もある。  新神奈川アリーナ。  ここは今日、爽のいるカラフルストリームがコンサートを行う場所だ。  爽からも今朝、メッセージで『今日から日曜まで新神奈川アリーナでライブ。月曜に弁当頼む』と入っていた。 「客先って……」 「あぁ、ごめん。説明してなかった。えーと、美羽ちゃんはカラフルストリームって知ってるかな?」  裏口から入ろうと言う寺西さんとぐるっと建物を回り込みながら問いかけると、やはり彼の口からはカラフルストリームの名前が出た。  私に合わせてくれているようで、寺西さんの歩みはゆっくりだ。  梅雨明けしたのかと思うような晴天の太陽がじりじりと私たちを焦がして、額に汗がにじむ。 「はい」 「それなら話が早い。カラストのメンバーの都築 爽がモデルの田無 瑞穂(たなしみずほ)と来週公開の映画に主演するんだ」  ――それなら、よく知ってる。  だって宣伝で見るたびに、ふたりの様子に胸が痛んでいたから。……なんてことは言えるわけもなく、私は寺西さんの言葉にただ頷いた。
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