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今はカフェでパフェを食べる。
ちょっと韻を踏んでる。マロングラッセの乗ったパフェはひたすら甘くて少しだけほろ苦い。パフェの下の方にスポンジが詰まってるのは最悪、フレークも微妙。でもここのパフェはキラキラするグラスの底まで真っ白な絹みたいな生クリームと褐色の肌みたいに滑らかなマロンのムースと、アクセントに爽やかなオレンジのジュレ、それから宝石みたいなマロンのとチョコレートが詰まっている。本当に最高。口の中を蜂蜜と大人びたマロンの香りと甘すぎないクリームが満たす。
優し気な秋の太陽が照り付ける窓際で、パフェを食べる俺を眺めながらソウタは幸せそうに微笑んでいる。眺めてるのは顎の骨なんだけど。イケメンは絵になるな。うらやましい。さっきから周りの席からの注目が集まってるけど本人は慣れすぎてるのか気にしてないようだ。
ソウタは顔に似合わず辛党で、スイーツは俺が食べるばっかり。今もコーヒーを頼んでカップを傾けていた。
「あのさ、ソウタ的に恋人ってなんなの?」
「恋人? なに突然。こうやってデートしたりするものじゃないの?」
「ほら、恋人ってそうだろ? でも俺らはキストモだろ? ちがくね?」
「ヒロが1人でパフェ頼みづらいって言うから一緒に来てるんじゃん?」
そう、ここはとても有名なクウェス・コンクラーウェっていうカフェでいつも混んでいる。女の子だらけで、この中で男がたった1人でパフェを食べる勇気はない。昔から来たかった店の食べたかった秋のスペシャルマロンパフェ。幸せ。
「それはそうなんだけどなんか最近よくわかんなくて」
「よくわかんないなら気にしなきゃいいじゃん。それとも恋人になりたい? 歓迎だけど」
「いや、そういうことじゃなくて……どっちかというと逆で。なんか恋人みたいで嫌っていうか」
「今更!?」
えっちょっとまって? 今更ってどういうことだよ。
「えっと、触るの嫌だった?」
「今はそんなに嫌というわけでは」
ソウタはそっと目をそらして少し目元を赤くしてもじもじして言う。
「それならやめて欲しくないんだけど」
「まあ、それは骨好きなのはわかってるので」
「そう? 嬉しい。ううん、そうだなぁ? 入れていいなら恋人かも」
「それはない。ないない。そもそもなんでその前提なの。俺が入れる方でもいいんじゃないの?」
「ええ? 入れたいの? ……入れさせてくれるなら頑張ってみようか。交代で」
案外本気で検討してるような表情にあわてる。
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