歯ヲ齧ルの3

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「いや、そんなことじゃなくて入れたくもないから」 「うーん、まあ好きなの歯だもんね」 「それ関係あるの?」 「えっ勿論? 骨の間に入るんだよ? 堪んなくない?」 ソウタが口元を手で隠して俺だけに見えるように親指をゆっくりしゃぶって歯を立てる。ドキリとする。唇が渇く。顔が首元から真っ赤になってく。こんなとこで何してんだよ。 「歯に囲まれるときもちいいでしょう? 俺も大好きなヒロの骨に囲まれたい」 「ハードル高すぎ」 「わかってるわかってる。だからしたいって言わない」 いつもながら気づかいのポイントが謎すぎる。他は無理やり言いくるめてくるのに。 「うーん、口でもして欲しいんだけどやだよね」 「それもやだ。ぜったい」 「頭蓋骨の中に入れるんだよ? はぅ、想像しただけで堪んない。でも大丈夫、俺も歯止め効かなくなりそうだし。キスも好き。あとでいっぱいキスしながらしようね」 頭蓋骨? 今、何か衝撃が走った。 俺は歯が好きだからキスたくさんしたい。ソウタもキスたくさんしてくれる。ソウタもキス好きなのかなとか俺に付き合ってくれてるのかなと思ってたら俺の頭蓋骨の中に舌を入れている感覚だったのか? 頭蓋骨=骨。あれ、ちょっと待って。ソウタは俺の骨の中に入りたい。頭蓋骨にはもう散々入られてる。2人で擦ってイくときはいつも舌を深く絡み合わせてた。骨に囲まれてイくのが恋人なら、ひょっとしたら、ソウタの中ではすでに俺は恋人なんじゃないのだろうか。 でも俺もいつもソウタの歯のことを考えてる。この歯に齧られたいって。それで結構実際口でしてもらってる。ソウタの歯に囲まれてイく。ソウタが俺にするのと同じことを俺はソウタにしてもらってる気がする。客観的には俺の方が酷い。キスならともかくフェラは普通の恋人でもしたりしなかったりだろ? 何かひどく混乱する。 なんだか少し、魔法が解けてきたような。 ソウタはもじもじ俯いてコーヒーを眺めている。 「ねぇ、俺すごくキスしたくなった、ラブホ行きたい」 「いや、男同士でラブホ入るのはちょっと」 「ヒロ変なとこ気にするよね?」 変なとこではないと思う。それにキスをするのにラブホにいかないと思う。 混乱する頭でライブに行って、混乱する頭でソウタのマンションに帰る。俺とソウタの関係ってなんなんだって、動揺してて結構飲んでしまった。
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