歯ヲ齧ルの3

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「ねぇどうしたの? だいぶん酔ってる?」 「うんちょっと」 よしよしとソウタは俺を抱きしめて心配そうに顔を覗き込み、唇が触れる。 ソウタの好きなのは俺の骨。それで俺の頭蓋骨はもう何度もソウタの舌で深く犯されてて今さら恋人も何もないような。そう思うとキスが怖い。俺をこじ開けて侵入する舌が何か別のもののように思える。 今朝までは全然違和感なく舌を絡めあっていたはずなのに、混乱が続いてて思わず突き放してしまう。そんな様子に心配される。 「どこか気持ち悪い? 今日はもう寝ようか。お風呂はどうしよう? 明日にする?」 「お風呂は入る」 これまで普通にキスしてたのに。むしろ俺からしてたのに。俺が勝手に混乱してるだけなのに。ソウタの俺を気遣う変わらない優しいしぐさにとても居た堪れなくなる。 作務衣を受け取って1人で風呂につかる。 一緒に風呂に入るのは俺の認識でキストモを超えるから風呂はいつも1人。風呂はキスに派生しないから。でもキストモってなんだろう。風呂でもじもじと折り合いをつけようと色々と言い訳を考えるけど、答えは全部期待から外れてる。 俺とソウタの関係はすでにキストモを大きく外れてる。というか普通キストモでフェラしない。キストモになる前からしてたし気持ちいいから気にしないようにしてたけど。それに一緒に擦ってイくのは男同士のセックスって前に言われた記憶もある。あんまり考えないようにしてたけど。しかも最初から俺から舌を絡めるキスをしてる。俺は俺の中を舐め回されて喜んでる。ソウタもそう認識してるだろう。これってどう考えても恋人じゃないのかな。 でも、俺は何ていうか、やっぱり男に恋愛感情は持てない。今も男同士は気持ち悪い。ソウタのチン○触ってるけど声が女の人みたいだからなるべく気にしないようにしてるのであって、チン○だと思ったら触れない。入れたり入れられたりは想像もしたくない。 でも俺はソウタの歯に齧ってもらってる。女顔だし慣れてきたから平気だけど、よく考えて男としてると思ったらなんだか急に気持ち悪い。 何だろうこれ、価値観が自分の中でごちゃごちゃになってる。俺はやっぱりゲイでもバイでもなくてノーマルで、男とやるのはすごく気持ち悪いし嫌。でも個別でみるとその行為は気持ちよくて受け入れてる。どうしていいかわからない。 コンコン 風呂の扉を叩く音がしてそっと扉が開けられた。 「あ、よかった。また倒れてたらと思って」 心配そうな顔が覗く。改めて見るとどうしても男だ。 冷静に見ると、この人とキスするのは抵抗がある。 「はやめに出なよ?」 そういって扉は閉められた。 ソウタ自体は友達としてなら好きだ。いい奴だと思う。でも友達は友達。恋愛感情が湧くわけじゃない。ソウタをソウタと認識して恋愛するのは無理に思える。このままの関係は気持ち悪い。 でも歯は好き。歯に抱いているのは明確な恋愛感情。ものすごくズレている。頭の中がバラバラに散らかっている感じ。
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