エピソード Extra

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エピソード Extra

視察を終えおじい様への挨拶も済ませ、花音と二人俺の家に帰った。 父親は特に何を言うでもなく一度頷いただけだった。受け入れてくれたのだろう。 母親にいたっては花音を連れて帰ったことに、ができたと大喜びだ。 いや、花音は綺麗だがれっきとした男なので娘ではないのだが、花音も嬉しそうなのでまぁいいとする。 この様子なら花音はこの家でも花音らしくいられるだろう。 ひとまずは安心だ。 歓迎されなかったとしても俺が全力で守るつもりではいたが、歓迎された方がいいに決まっている。 夜、俺の部屋でやっと二人きりになれた。 俺はベッドに寝転がり、母親と花音の様子を思い出し少しだけムっとする。 「どうしたの?何か拗ねてる?」 「拗ねてなんていないが、母さんと少し仲が良すぎやしないか?」 花音はキョトンとしてすぐに笑いだした。 「あはは…!タカシさんったら焼きもちやいてる」 「違う。焼きもちなんかじゃ…」 「えー?俺タカシさんが焼きもちやいてくれて嬉しかったのになー?」 花音はその愛らしい唇に悪戯っぽい笑みを浮かべて微笑んでいる。 途端に騒ぎ出す心臓。 ドキドキドキドキ。 「ねぇ、タカシさん、俺タカシさんのお嫁さんなの?」 「そうだな。そういう事になる。不満か?」 花音はふるふると首を左右に振った。 「―――じゃあ、その証を…見せて?」 さっきまでの子どもっぽく可愛らしいかった表情とは違う大人の妖艶な微笑み。 その瞳は欲に濡れ、薄く開いた唇は俺を誘っている。 きしりとベッドがきしむ音がした。 たまらず重ねた唇。 それが合図になって欲望の限りお互いを貪りあった。 暗闇の中、明かりは窓の外から差し込む月の光だけ。 重なり合い、もつれ合う二つの影は夜が明けるまでその動きを止める事はなかった。 愛してる。愛してる。愛してる。 あの日キミに出会って流した涙の意味を俺はやっと分かった気がする。 ―――――愛する人に出会えた喜び。 -終-
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