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エピソード 0
今日俺は38回目の誕生日を迎えた。
里見家は日本に残る数少ない財閥の一つで、俺は里見家本家の長男で跡取りとして産まれた。
だから小さい頃から厳しく躾けられ、欲しい物は全て与えられてきた。
知識や物、人さえも。
だけど、ふとある事に気づいてしまった。
たとえば俺が里見天じゃなかったら、
たとえば俺が無一文だったら、
たとえば俺がぶくぶくと太った不細工なはげおやじだったら…
今俺が持っているモノは変わらずここにあるのだろうか?と。
きっと里見天でなかった時点で全てはここにはなかったのだろう。
気づいてしまえば今まで手にしていたモノが途端に全て色褪せて見えた。
ちっぽけでつまらなく、とても滑稽だ。
俺は僅かばかりの荷物と金と希望を持って、家を出る決意をした。
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