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家に戻ると騒然となった。俺が姿を消して一ヶ月。
騒ぎにならない方がおかしいか。
使用人たちに囲まれ、すぐさま父親の元へ連れられて行った。
「ただいま戻りました」
「馬鹿者が。―――身体は…いや、いい。今日はゆっくりするといい」
そう言って父親は一度だけ俺の顔を見て、仕事に戻って行った。
いつも冷静で冷酷でロボットのようだと思っていた父親が今日は違って見えた。
目の下に浮かぶクマ。俺の事を心配していた……?
俺は家の事や家族の事など一切心配などしなかったというのに。
―――自分の方がロボットだったのか、と苦笑を漏らす。
さぁ、感傷に浸る時間はおしまいだ。
これから俺の戦いが始まる。
「松本、とある資料を集めて欲しいのだが」
「はい。ただちにお調べしましてお持ちいたします」
優秀な秘書はお辞儀をし俺が言いつけた仕事に向かった。
花音、俺はこんな権力と金を使った方法しか分からないんだ。
キミのまっすぐな愛情に応えられているか?
俺はもうキミを手に入れようとは思わないよ。
こんなところにキミを連れてきてしまえばキミはキミではなくなってしまうだろう?
たとえこの先一生キミに会えなくても、キミはキミのままで幸せに。
花音、沢山の愛情をキミに贈るよ。
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