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北風に曝された
満天の空は
しばらくすると雪雲に隠れた
大粒の雪が
静かに降ってくる
青い夜の中で
漆喰の壁に囲まれた道を歩く
内側から電灯に照らされた竹格子は
石畳にその影を落とす
桜木の引き戸の足元の灯籠にも火は灯り
揺れる反射が
ふたりを照らす
「寒いね。」
そう言って君はいつものように
ぼくのコートのポケットに手を入れる
君の冷たくなった手を温める
ぼくの心が温まってゆく
「白くなって来たね。」
「きれいだね。」
君はお気に入りのマフラーの半分を
僕の首に巻く
「もっと真っ白になればいいのに」
「なるよ。もうすぐ。」
「私たちが隠れるくらい真っ白になればいいのに」
強くなった雪は、頬の上で解ける
「ふたりが触れ合っている所は暖かいね。」
「ボンドみたいにくっつかないかな?」
「くっつくよ。くっつく。ぎゅーっ!」
そう言って君は冷たくなった鼻を
僕の鼻にくっつけて
そのまま可愛くキスをした。
「Merry Xmas」
「うん。Merry Xmas」
「なんで泣いてるの?」
「しあわせだから。」
「変なの。今日は何にする?」
「おでんにする」
「クリスマスなのに?」
「忘れないでしょ。おでんのクリスマス。」
「うん。忘れないね。」
「だいぶ真っ白になったね。そろそろ帰ろうか。」
「うん。もう少しだけ。
新しい雪の上に二人の足跡つけてからね。」
「クリスマス…終わっちゃうね。」
「まだ終わってないよ。」
🎄FIN🎄
Merry Xmas💝
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