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「さあ、授業を始めようか。まずはαの生徒との交流だ。皆、プレイルームに移動」
移動するなら別にこの教室にくる必要はないと思う。なぜ田島はうちの教室に来たのだろう。不思議に思いながら俺は移動の準備をする。
「西岡君…だったかな」
教室の皆がぱらぱらと席を立っていく。そんな中田島は俺の席に来ていた。
はあ、と気のない返事をする。一体何の用だ。
こっちは顔を合わせたくないってのに。
「こないだはすまん。何だか嫌な思いをさせたようだ」
「いえ」
わざとそっけなく答えて俺は教室を出ようと歩き出す。それをでかい身体が遮った。
「君は中途からの転入生なんだってな。ごめんな、事情も知らずに」
俺は何も言わずに立っていた。こうも邪魔されると先に行けない。
「…そんな嫌わないでくれ。まあ、そう言っても無駄か。俺は嫌いでいいよ、だからその、学校生活は楽しくやろう」
俺は田島を睨む。なにか、すごく悔しい。悔しくて、悲しくて。全部この人にはお見通しのようで、俺はそれに腹が立っている。
「何も知らねーくせに?ただのでかいだけのおめでたい教師が調子に乗るんじゃねーよ」
「ははっ。威勢がいいなァ」
楽しそうに田島は笑って、ぽんぽんと俺の頭を叩く。それから悪かったな、と言って先に行ってしまった。
とっくに皆は先に行っている。
がらんとした教室の中、俺は一人舌打ちをかます。
その音だけが教室にこだました。
虚しさが心の中に染み入っていくのが分かった。
プレイルームはがやがやと騒いでいて、αとΩがごった返していた。その中でも本能というか、何か感じるものがあって、αの人間は自分の視覚に訴えてくる。無理やり自分の中に入ってこようとするαがうざったかった。
北原は学生の会にありがちなジュース類を用意して、前のテーブルで配っている。
「よし、西岡も来たな。じゃあ始めよう」
田島の声で、皆各自騒ぎながら席に着く。
俺は目の前にある椅子に腰を掛けた。一体何が始まるのか。
「さっさと始めろよ」
自分の横に座っている、栗色の髪がぼやく。俺は横目で見て、全くだと思いながらその言葉を聞いていた。
「さ、皆今日は交流会も二回目だ。前回いなかった生徒も来ているし、飲み物でも飲みながら少しゲームをしようと思ってる。いいかな」
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