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田島が生徒に言うと、拍手が巻き起こる。そんな中、拍手をしていないのは俺と横にいる栗色の髪だけだった。 「…」 視線を感じて、俺は横にいるそいつを見る。 「へェ、あんたか」 「?」 「西岡先輩」 「そうだけど」 「田島先生からき聞いてますよ。中々喰えねェ人だそうですね」 俺が睨むようにしてみると、そいつは笑いながら言う。 「俺は堀っていいます。αクラスの二年生。アンタ三年でしょ、西岡さん」 「…ああ」 そっけなく返すと、堀という生徒は唇に手を当てて言う。 「変わった人だ。αの俺に靡かないΩなんてね。面白くなりそうだ。今後とも仲良くして下さいよ」 差し出された手を、俺は断る。くっく、とそいつは笑って、また俺を見つめて来た。確かにコイツは、αなのだろう。特有の匂いと逆らえないような不思議なオーラ。この空間にいることが俺には苦痛だった。自分の思いとは別に身体が反応するこの感覚。 もし薬で発作を抑えていなかったら、俺達Ωにはこいつらに逆らえる術はなさそうだ。 本当に、この学校は腐ってやがる。 Ωをまるで飼い猫の様にしたいいってことか。 「じゃあ、まずはくじを引いてもらおう。今時こんなので悪いが」 田島が言うと、北原がすぐさま、こよりのようなものが多量に入ったくじを持ってくる。一体何が始まるのだ。もうこの教師は本当に勘弁してほしい。 「皆一人ずつ引いてくれ。一人だけ当たりがある。赤いしるしが付いているはずだ。そいつが指名した奴と、今日一日過ごせるって寸法だ。要は、お墨付きの授業ボイコット券がコイツだ」 ニコニコしながらこの教師はとんでもないことを言って来る。俺は当たるはずもないこのくじに、何も感じなかった。俺は関係ない。くじが当たるような強運でもない。まあ、だからといってかったるい授業なんてエスケープしたいのは山々だったが。 カップに大量に入ったくじを、北原が皆にひかせるように回っていく。外れて残念がる声や、様々な声が聴こえてくる。αの大声で笑う声も教室に響いていた。全く当たりが出ない中、最後に北原と俺と堀、この三人が残っていた。 「皆さん、せーの、で一気に引きましょう。いいですか?」 北原が緊張した面持ちで言って来る。そうか、俺たちの三人の中なのはもう決定しているのだ。堀も組んでいた足を直して、指を伸ばしてきた。 「せーの、それっ」
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