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北原の掛け声で三人共に手を伸ばす。 赤いくじを引いたのは、他でもない堀だった。 「はは、運がいいや。じゃあ、この西岡先輩と、一緒に過ごしますよ。文句ないですね?田島先生」 田島は狼狽えた表情をすると、ああ、おめでとう、と言って拍手をした。それに続いて皆も拍手をしてくるのを、北原だけが落胆の表情で睨んでくる。 俺は戸惑いながらも、堀という後輩が腕を引っ張るのに、身を任せるしかなかった。強い力で腕を引っ張られて、俺は体制を崩す。それを半ば強引に支えられながら進む堀という後輩に、俺は苛立ちを覚える。全くなんて強引な奴だ。 中庭に着いたので、俺は奴の手を振りほどく。 「…っ、離せよ」 「はっ、やっと口開きましたね」 そよそよとそよぐ風。きらきらの木漏れ日の中で、奴の髪が淡く光って奇麗だった。しかし全く、 気分が悪い。そもそも何で俺はコイツとここに居るんだろう。初めて会った相手と、俺はここに居る。 「何で、俺を連れて来た」 奴は遠くを見ている。さっきは見せていた余裕の顔が、もう消えていた。 「何で?…さあ」 理由はない、ということか。まあ、それならそれでいい。今日のエスケープは礼を言わなければいけないかもしれない。でも俺にはそんな気はなかった。 「そうですね、何か.......アンタは俺と同じ匂いがしたんですよ」 「同じ…匂い…」 「例えば、叶わない恋、とか」 俺は奴をじっと見る。重い言葉とは裏腹に、奴の態度は軽かった。言葉を続けるコイツの顔を見ていると、まるで中学生の様に可愛い顔をしている、と思う。αの奴らはもっと、身体がでかくて横柄な印象がある。コイツは背も低く、童顔でαの特徴とは程遠い。 「はは、まさか図星ですか?黙り込むなんて」 否定の言葉を言って、俺は木漏れ日の連続に逃げ込む。木の葉が重なり合って、沢山のプリズムに囲まれた俺の制服はまるでドット柄になったかのように彩られていく。 「冗談ですよ。気にしないでください」 堀も木漏れ日に紛れて、同じ柄になりながら下から見上げては俺の顎を掴む。 その、大きな瞳が俺を睨んでいた。 「…アンタ、人を誘うような面してる。それで問題児ときてる。誰でもほっとけないだろうな」 ククク、と悪そうな顔で笑って、乱暴に奴は俺に口づけた。 「…んっ」 その、怪しく光った瞳が、俺をまだ睨んでいた。
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