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「先生、平等、って言っといてそりゃあない。西岡さんだけを特別扱いはなしだ」 呆れた顔で堀が言うのを、俺は聞いていた。 確かにそうだ。俺はそんなに田島に尽くされる理由はない。 「とにかく、俺にはお前を守る義務がある。それだけは忘れないでくれ」 「…知るかよ」 そう突っぱねると、真っすぐに俺を見つめる田島という教師に俺は何故か後ろめたくなって廊下を走っていった。後ろで呼ぶ声は優しく、俺の心に沁み込んでいく。この学校に来て、後ろ髪を引かれたのは初めてだった。いつものように授業をさぼって出てきたはいいが、なんとなく罪悪感が残る。田島という教師は、どうしていつもあんな風に俺を気にするのだろう。 ほっといてくれればいい。 構ってくれなくても、俺は俺のやり方で今をやり過ごすだけだ。でも何故か気になってしまう。 田島の言うことに耳を傾けてしまう自分がいるのがとても嫌だった。 「…畜生」 呟いて、寮までの道を歩いていく。授業に出ないとなると、行く場所は自分の部屋しかない。 ふと、道のサイドに目をやると、比較的大きい鳥が木に留まっている。尾が長く、水色の羽の色が美しかった。バサッと飛び上がる鳥を見て、単純に羨ましい、と思う。高く高く飛び上がり、木々を超えて、この閉鎖的な学校なんて飛び越えて行ってしまえるなんて。 はあ、とため息を付く。 鳥の遠くで鳴く声を聴いて、俺は目を伏せた。 途中の噴水の水しぶきをぼんやりと見る。 俺は今、何をしているのだろうと心が焦がれるような気持でいる。俺はこれからどうしたらいいのだろう。ここから出られるのだろうか。 『俺にできることがあったら…なんでもしてやりたいんだ』 そう言った田島の声が響く。もし、ここから出たい、と言ったら。あの教師は出させてくれるのだろうか。 今まで一人でやらなきゃいけないと思っていたところに手を差し伸べられると、縋りたくなっている自分が情けない。そんなにも俺は切羽詰まっているのか。田島に助けを求めようと少しでも思ってしまったのは自分の弱さだと強く感じる。 田島がもしそれを叶えてくれるなら、俺は巧にまた会えるのだろうか。自分からここを選んでおいて、巧から離れておいて、こんなことを思っている自分。 今、お前は何を考えているのだろう。何を思っているのだろう。 誰と、いるのだろう。
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