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なんとなく後ろめたく感じる気持ちを隠して俺は言った。 「えらく気になってるみたいでね、アンタのこと。αのクラスでも話すのはアンタのことばっかりだ、田島先生は」 にやにやと笑いながら、焼きそばパンを頬張りながら堀は言う。 「…幼馴染なんですってね」 土方は答えなかった。 「可愛い弟分、ってか」 全く今日の堀は饒舌だ。俺は苛ついておい、いい加減にしろ、と嗜めた。 「はいはい。Ωの癖に短気だなこの人は」 片手でパンを持ちながら、堀は去っていく。 俺は少しホッとしながら、振り返り巧の方を見つめてみた。 まだ、あそこにいるのだろう。 何とも言えない気持ちで、俺は姿の見えない恋人を想う。 「西岡さん」 突然後ろから声を掛けられ、俺はうわっと声をあげてしまった。 「…やっぱり、おかしいと思ったんです。知り合いでもいたんですか?あそこに」 「ちが…違う」 「ふーん」 目を背ける俺。 じっと見つめる堀。 「…昔のセフレでもいたんですか」 くくく、と下品に笑って、堀は去っていく。俺はこんなにもお見通しの堀を、不思議だと思う。何故こんなにも俺の心が読めるかのような発言を繰り返すのか。田島の事といい、巧の事といい。 「お前の方が異種だよ、堀」 呟いて、俺は見るのをやめて自分の教室に戻る。買ったパンを拡げてみても、まだ実感が湧かない。この学校に巧がいる。それだけで、全く心が軽いのだ。まるで夢心地で頭がぼーっとしていた。 アイツはどうやって入ったのだろう。大体、高校があるはずなのに。今はどこに住んでるんだろう。 声を聴いてしまったら、身体が疼いてしまって仕方ない。あの声に、何度囁かれたのか。 『西岡…』 抱いてもらったのに、こんなにもまだ求めている。あの時、もう会わないと心に誓ったのに。 自分に巻き込まれて、アイツにもし何かあったらと考えるとぞっとする。俺は、巧に会っていいのだろうか…?あの気持ちは、一過性のもので、もしかしたらこれからどんどん冷めていくものかもしれない。そう思うと、巧に会うのが怖い。  俺たちは、まだ二回しか抱き合ったことが無かった。しかも、そのどちらも、媚薬のせい、もしくは媚薬の効いたふりを俺がしている。俺が誘っている。Ωの誘いを断れるβは、いない。 「…最悪…」
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